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執筆者の写真Kyoko Akimoto

言えなかった言葉のリハーサル

帰国してから1ヶ月は家で過ごすか公園を散歩しながら大学院のエッセイを書く毎日だった。帰国した時は気抜けするほどのんびりした雰囲気の日本だったが、この時期には緊急事態宣言が発令されていた。イギリスでは一時的に路上生活者はホテルなどに避難できるようになったらしいが、イギリスでのCOVID-19の広がりや悲惨なニュースをたくさん目にするたびに、ロンドンにいる友人やシェルターであった人たち、ロンドンでの生活を思い出しては悲くなってしまった。



2020年4月、帰国前日に出会ったホームレスのこと、自分の行動を思い出していた。あの日、彼を無視したことに対する後悔が胸の中にシコリのように残っていて苦しかった。彼にどう接したかったのか、もう一度自分に問いかけてみた。誰の目も気にしないで入れたら、本当に自分の感情に従って彼に接することができたら、なんて話しかけたかったかセリフにしてみた。


‘Hi, I am leaving London tomorrow to return to my country for the time being, so I’m giving you the change I have now. This is a very difficult time for everyone. I pray everything will be all right soon. Please take care. I am not even sure this is the right phrase for you because, you know, I can tell you are in a difficult position to keep safe and take care of yourself. I feel sorry for you from the bottom of my heart. And please forgive me for talking of my feelings all of a sudden like this. Good-bye.’


こんにちは。

一旦帰国してロンドンから離れることにしたんです。 それで、しばらく(ポンドの)小銭も使わないし、あげます。

本当、大変な世の中ですよね。

お体に気をつけて。

こう言う言い回しがふさわしいのか、わからないんですけど、

だって、気をつけたくたって難しいですよね。

大変だろうと思ってて、

本当、いきなりこんな風に話しかけてすみません。

でも、なんだかこの状況に圧倒されちゃって。

みんなそうなのんでしょうけど。

けど、助け合うことが一番大切な気がしてて、

聞いてもらってありがとうございます。

さようなら。


もしあの時に戻れるなら、次は彼のことを無視しないでこんな風に話しかけたい。セリフを覚え、東京湾の目の前にある地元の海浜公園で撮影した。海をみていると遠い国のことを思い出す。i-phone 7plusをセットし、舗道の端で寝袋に身体を半分入れて座っていた彼の姿を思い浮かべながら、彼に向けて語りかけ始めた。


ロンドンではホームレスの人を本当によく見かけるし、予期せず出会うことも多い。そういう時に自分で納得できる行動をとるのは本当に難しいことだと思う。おそらく、他者への共感力だけでなく、倫理的瞬発力が必要になってくる。


リハーサルをしたからって彼やホームレスの人達の助けになるわけではないけれど、未来の自分の行動は変えることができるんじゃないだろうか。


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