2020年2月14日
隣の車両から誰かが乗客に話しかける声が聞こえてくる。おそらくホームレスだろう。少しするとその声の主は私がいた車両に入ってきた。50代位の白人の男性で、くたびれた寝袋を持っている。早口のブリティッシュイングリッシュで勢いよくホワイトチャペルミッション(ロンドンにあるチャリティ団体)について話し始めた。彼のスピーチはかなりのインパクトがあった。と言うのも、オーバグラウンドでは車内放送や電光掲示でこのようなアナウンスが流されるのだ。
To help someone you see homeless or asking for money, please donate to ‘Whitechapel Mission’. Any donation will be used carefully, and your generosity will be welcomed.
(ホームレスやお金を頼む人の手助けには、どうぞホワイトチャペルミッションに寄付をお願いします。あなたの寛大な行為は歓迎され、全ての寄付は適切に利用されます。)
身なりはみすぼらしかったが、それとは正反対に彼はとても堂々と'Care me. Small donation please.'(俺のことを気にかけてもいいだろう。ささやかな寄付を頼みます。)と話している様子に圧倒されてしまった。私には彼の英語は早口すぎて何を言っているかほとんど聞き取れなかったが、その話しぶりには説得力があった。
よくも悪くも私たちは感情的に判断をする。倫理的な判断を迫られる場面で、目の前に声を持った「この人」が「私」に呼びかけているからこそ私の気持ちはかき乱されるのだ。直接的にケア・ミーというフレーズを使う彼の勇気やある種のタフさ、このような力強い言葉をホームレスが発することに、ほとんど感銘に近いような感覚を思えた。
彼のスピーチは他の乗客の心も動かしたようで、珍しく何人も彼の呼びかけに反応し、小銭を渡していた。
Whitechapel Mission website
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